シンプルデザイン「削りタイル」

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住宅の外壁全面には、杉板本実型枠による打ち放しコンクリート壁仕上げが採用された高級住宅です。木の痕跡をそのまま写し取ったコンクリートは、素材としての強度と同時に、人の手仕事の記憶を内包し、外観に静かな存在感を与えています。その外壁の佇まいに呼応するように、内部空間は一見すると極めてシンプルな構成でまとめられていますが、実際には寸法と質感の積層によって、深みのある空間体験が丁寧に組み立てられています。
室内壁面に採用されたタイルは、40mmという明確な寸法を基準とし、打ち放しコンクリートの40mm幅と正確に揃え込むことで計画されました。異なる素材でありながら、同じ寸法秩序を共有させることで、壁面全体に一体感と緊張感が生まれています。タイルとコンクリート、それぞれの素材感が主張しすぎることなく、互いを引き立て合う関係性が、この空間の静かな豊かさを支えています。
建築家がこの住宅で強く望んでいたのは、「削り磨きタイル工法」による独特の質感を、建築の一部として成立させることでした。タイル表面だけでなく、目地までもをフラットに研磨することで、壁面は単なるタイル張りを超え、まるで結晶が連なったかのような独特の表情へと変化します。光の当たり方や時間帯によって微妙に陰影を変えるその壁面は、目新しさを持ちながらも、不思議な落ち着きを空間にもたらしています。
この仕上げを成立させるためには、綿密な割付計画が不可欠でした。特に5mmという細目地を、計画性をもってパーフェクトに仕上げることは、図面上の理想だけでは決して到達できません。施工精度、削りの深さ、磨きの加減、そのすべてが現場で判断され、積み重ねられていく必要がありました。本案件は、そうした難易度の高さを理解したうえで、建築家から責任施工として一任されたプロジェクトです。
私たちはこれまで、多くの削り壁面プロジェクトに携わり、その都度、素材と向き合い、削り方や磨きのノウハウを現場で鍛え上げてきました。本計画においても、その経験を単なる技術としてではなく、アーティスト的な感性として現場に持ち込み、職人とともに完成度を追求しました。一枚一枚のタイル、一筋一筋の目地が、壁面全体としてどのような表情をつくるのかを常に意識しながら、施工が進められています。
完成した削り磨きタイルの壁面は、杉板本実型枠コンクリート仕上げとの相性においても、建築家の承認を得た、極めて完成度の高い仕上がりとなりました。異なる素材でありながら、互いの質感を尊重し合い、一つの建築として静かに調和しています。この住宅における壁面は、単なる仕上げではなく、設計者と施工者、そして職人の意志が結晶化した建築の一部であると、自信をもって言える仕上げとなりました。
Outline
- 名称
- Yプロジェクト
- 所在地
- 千葉県習志野市
- タイル施工
- TLCアソシエイツ責任施工
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