KMZエストラルゴ駒沢Ⅱ

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ご紹介いただいたこの案件に対して、私たちは「ただ仕上げる」のではなく、見る人の記憶に残る壁面をつくりたいという想いで現場に入りました。
これまで積み重ねてきたノウハウを、現場の職人たちと共有しながら、ひとつひとつの判断を積み上げていく。そんな時間の連続でした。
当初予定されていたタイルから急遽変更となり、タイル割りのない状態からの責任施工でのスタート。
設計図面はあっても、実際の下地はまだ未完成。現場監督から伝えられる予想寸法をもとに頭の中で割付を組み立て、下地完成後には自ら実測を行い、再び割付を調整する。
寸法のズレ、納まりの違い、想定外の納まり壁。タイル張りを前提としていない箱型の壁面もあり、図面通りでは決して納まらない箇所が次々と現れました。
しかも今回は、当社の標準レンガ寸法で割られてた躯体ではありません。
部分ごとに異寸サイズを使い分け、役物を使わずに納めるという、めったに経験しない施工条件。
役物がある現場との作業効率の違いを、あらためて身をもって実感することにもなりました。
それでも現場は、不思議と重苦しさよりも高揚感に包まれていました。
「ここ、どう納める?」
「このライン、もう2ミリ詰めよう」
職人と現場管理の私とが、まるで即興演奏のようにアイデアを出し合い、その場その場で最適解を探していく。
アドリブ演奏のセッションのような日々でした。
施工途中には、現場に出入りする他業種の職人さんたちが足を止め、
「こんなレンガ、見たことないよ」
「どこのタイル?」
と興味深そうに声をかけてくれます。
電気屋さん、設備屋さん、大工さん――それぞれのプロの目に、なにか“他とは違う感覚”が映っていることが伝わってきて、私たちも思わず誇らしい気持ちになりました。
工夫に工夫を重ねながら、一枚一枚を積み上げるように張り進めていく外壁。
どこにイレギュラーな落とし穴が隠れているのか、最後まで気が抜けない。
しかしその緊張感の中にこそ、この仕事の醍醐味があるのだと、あらためて感じさせられる現場でした。
やがて足場が外れ、竣工が近づいたある日の夕方。
休憩時間にタバコをふかしながら外壁を眺めていた電気屋さんが、ぽつりと一言。
「いやぁ、きれいな外壁だねぇ」
その声に、設備屋さんも、内装屋さんも頷きながら外壁を見上げる。
何気ない一言でしたが、私たち施工部隊は思わず顔を見合わせてニヤけてしまいました。
現場で一番苦労を見てきた人たちの、何より正直な評価だったからです。
最終的に、施主様、建築家の皆さまにも大変喜んでいただきました。
「想像以上の仕上がりです」
その言葉をいただけた瞬間、これまでの試行錯誤のすべてが報われた気がしました。
図面の線を読み、寸法を疑い、現場と対話し、素材と向き合い、職人と呼吸を合わせる。
この外壁には、そんな無数の判断と覚悟が積み重なっています。
完成した壁面は、静かに佇みながらも、確かな存在感を放っています。
それは決して偶然の産物ではなく、現場に関わったすべての人間の手と目と感覚がつくり上げた、ひとつの「作品」なのだと、私たちは誇りをもってお伝えしたいと思います。
Outline
- 名称
- KMZエストラルゴ駒沢Ⅱ
- 所在地
- 東京都目黒区
- 設計
- 竹内 巌/ハル・アーキテクツ一級建築士事務所
- 施工
- 大原工務所
- 使用タイル
- TLC社 二丁掛特注ハンドメイド加工
- 施工図(タイル)
- TLCアソシエイツ
- タイル施工
- TLCアソシエイツ
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