「田園調布2丁目ビル」

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古アパートを解体し、近隣の環境に彩りをもたらせた還元焼成レンガタイル。
外壁のメンテナンスだけではなく、近隣に「花」を植えるような建物になりました。
RCのみでは硬い表情になる建物も壁面と床の古煉瓦によって、本来の田園調布が蘇りました。
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●ポイント:個人オーナーとして複数の不動産を所有されている方のなかに、外装の仕上げとして「炻器質の煉瓦タイル」を一貫して選び続ける方がいらっしゃいます。
その選択は、単なる好みや仕様の踏襲ではなく、建物と街、そして時間に対する明確な思想に裏打ちされた判断であるように感じられます。
まず、そこに見えるのは「建物は消費されるものではなく、育っていく存在である」という認識です。
短期的な利回りや表層的な新しさよりも、年月を経てなお価値を保ち、むしろ深めていく外装を選ぶ姿勢。炻器質の煉瓦タイルは、風雨や紫外線にさらされながらも、大きく劣化せず、表情を少しずつ落ち着かせていきます。その変化を「劣化」と捉えず、「時間が刻まれた証」として受け止める感覚が、まず根底にあります。
次に感じられるのは、「近隣環境への配慮」です。
煉瓦という素材は、突出して自己主張するわけでも、流行に過剰に寄り添うわけでもありません。街並みのなかで過度に浮くことなく、しかし確かな存在感を保つ。隣にどのような建物が建とうとも、急に古びて見えることがなく、街の「背景」として機能し続ける。その安定感を理解したうえで、外装材として選ばれているように思えます。
これは、建物単体の美しさだけでなく、「その建物がそこに建ち続けること自体が、街に与える影響」まで視野に入れた判断です。
入居者が入れ替わり、用途が変わり、時代の価値観が移ろっても、外装だけは街に対して誠実であり続ける。そうした姿勢が、結果として周囲からの信頼感を生み、長期的な不動産価値につながっていきます。
また、炻器質の煉瓦タイルを選ぶオーナーには、「メンテナンスをコストではなく、設計の一部として考える」視点も感じられます。
頻繁な塗り替えや意匠更新を前提とせず、初期段階で耐久性と普遍性を確保する。その結果、建物は過度に手を加えられることなく、静かに使われ続ける。これは管理の手間を減らすという実務的な合理性であると同時に、「建物に無理をさせない」という倫理的な判断でもあります。
さらに深いところでは、「所有することへの責任意識」も読み取れます。
複数の不動産を持つということは、単に資産を増やすことではなく、街の風景を複数箇所で預かるということでもある。その自覚があるからこそ、短期的な収益最大化よりも、周囲と調和し、長く受け入れられる外装が選ばれるのでしょう。
炻器質の煉瓦タイルは、華やかさを競う素材ではありません。
しかし、時間・環境・人の目線に対して、非常に誠実な素材です。
それを繰り返し選ぶオーナーの判断には、「建物は街の一部であり、街は次の世代へ引き渡されるものだ」という静かな思想が通底しているように思えます。
建物の価値とは、賃料や利回りといった数値だけで測られるものではありません。
周囲からどう見られ、どう受け止められ、どれだけ自然に街に溶け込み続けられるか。その積み重ねこそが、結果として数字に表れてくる。
炻器質の煉瓦タイルを選び続けるという行為は、そのことを知り尽くしたオーナーによる、極めて静かで、しかし揺るぎない意思表示なのだと感じます。
Outline
- 名称
- 田園調布2丁目ビル
- 所在地
- 東京都大田区田園調布
- 設計
- 石川設計工房
- 施工
- 三栄建商
- 使用タイル
- 特注レンガタイル60x227x15mm
- 施工図(タイル)
- TLCアソシエイツ
- タイル施工
- TLCアソシエイツ
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