年末にあたって

年末になると、多くの会社のホームページには、休業日や年始の営業開始日を知らせる文章が並びます。
それは実務上とても大切な情報ですが、当社の「お知らせ」欄では、あえて少し違う言葉を残したいと思います。

私たちは小規模な会社です。
そして、その判断の多くは、経営者である私自身の考えと責任のもとで行われています。
だからこそこの時期に、形式的な事務連絡ではなく、一人の実務者としての言葉を記しておくことに意味があると考えました。

今年一年、当社の仕事に関わってくださった皆さまには、心より感謝申し上げます。
同時にこの文章は、来年に出会う方々、そして現時点ではまだお互いを知らない誰かに向けても書いています。

レンガタイルという素材は、設計者にとって決して扱いやすい存在ではありません。
寸法精度、製造ロットによる色幅や焼きムラ、目地幅の許容、下地精度との関係、施工時に生じるわずかな誤差。
図面上では整理できているように見えても、実際の現場を想像した瞬間に、新たな不安が立ち上がってくる素材です。

割付は本当に成立するのか。
役物の納まりは無理をしていないか。
数年後、数十年後、この表情は建築にとって味わいになるのか、それとも違和感になるのか。
レンガタイルは、そうした問いを静かに、しかし執拗に突きつけてきます。

特に年末年始は、その迷いが強く意識される時期だと、私は感じています。
打ち合わせが一段落し、電話も鳴らず、図面と一人で向き合う時間が増えるからこそ、普段は流していた違和感が、はっきりと形を持ち始めるのかもしれません。
施主として、完成後の建築を思い描きながら決断に悩んでいる方。
担当設計士として、最終判断を自分一人で背負っている方。
この文章が、そんな方々の目にふと留まることを願っています。

私たちはこれまで、数多くのレンガタイルの現場に立ち会ってきました。
そこでは常に、「最初から迷いのない判断」がなされていたわけではありません。
むしろ、施工直前まで検討が続いたり、現場で寸法を再確認しながら微調整を重ねたりする場面の方が多かったように思います。

はっきりしているのは、良い仕上がりは、迷いを排除したところからは生まれない、ということです。
迷いながらも、素材の性質を理解し、施工条件を整理し、無理のない納まりを探る。
その過程を経て選ばれたレンガタイルは、完成後、建築全体を静かに支える存在になります。

小さな会社である私たちは、そうした迷いから逃げることができません。
誰かに判断を委ねることも、曖昧なまま進めることもできないからです。
だからこそ、設計者や施主の方が感じている不安や違和感を、他人事として扱わずにいられます。
断定的な正解を示すよりも、判断に必要な情報を整理し、納得できる選択肢を一緒に考えること。
それが、私たちの役割だと考えてきました。

今この年末年始にも、どこかでレンガタイルのことで悩んでいる方がいるかもしれません。
図面を閉じても頭から離れず、「この判断で本当に良いのだろうか」と立ち止まっている方もいるでしょう。
そんなときに、「迷っているのは自分だけではない」という事実と、「一緒に考える人間はいる」という感覚が、少しでも支えになれば幸いです。

今年お世話になった皆さまへ、あらためて感謝を。
そして、これから出会う皆さまへ、静かなエールを込めて。
来年も私は、派手な言葉よりも、現場と向き合い、考え抜いた判断を積み重ねながら、レンガタイルの仕事に取り組んでいきます。

どうぞ穏やかな年末年始をお過ごしください。


株式会社ティー・エル・シー・アソシエイツ
代表 木皿 真司

富士山も見守る「レンガタイルの家」2026良いお年を!