Color
レンガタイルの色彩
炻器質レンガタイルの色は「設計できる」
―― 無限に近い表現領域を持つ外壁素材という理解
外壁素材としてレンガタイルを検討する際、多くの設計者は「色」を既製品の中から選択するものとして捉えています。しかし本来、炻器質レンガタイルの色は、あらかじめ用意された中から選ぶものではなく、設計によって生み出すことができる領域にあります。
炻器質とは、およそ1200℃以上の高温で焼成される焼き物であり、緻密で吸水率が低く、高い耐久性を持つ素材です。しかし設計者にとって重要なのは、その性能以上に「焼成によって色が生成される素材である」という点にあります。塗装や表面着色とは異なり、炻器質レンガタイルの色は素材の内部から立ち上がるものであり、表面に付与された色とは根本的に性質が異なります。
この色は、単純な配色では決まりません。使用する土の種類、含有される鉄分や鉱物、添加される金属酸化物、そして焼成温度や焼成時間、さらには酸化焼成か還元焼成かといった窯の環境条件によって決定されます。加えて、窯の中での位置や炎の流れ、わずかな温度差までもが色に影響を与えます。つまり炻器質レンガタイルの色とは、材料と火と時間が織りなす「現象」であり、その組み合わせは理論上ほぼ無限に存在します。
さらに重要なのは、この素材において「ばらつき」が欠点ではなく価値として成立する点です。微妙な色ムラや焼きムラ、窯変による偶発的な変化は、一枚一枚のタイルに固有の表情を与え、壁面全体に奥行きと豊かさをもたらします。均一性を追求する工業製品とは異なり、炻器質レンガタイルは揺らぎを内包したまま成立する、極めて稀有な外装材です。
とりわけ還元焼成においては、窯内の酸素量を制御することで金属成分の発色が大きく変化し、同じ材料であっても全く異なる色相が生まれます。鉄分ひとつをとっても、酸化状態では赤や橙に発色し、還元状態では黒や青、紫へと変化します。このような色の深さと複雑さは、塗料や印刷では再現することができない、焼き物特有の魅力です。
このような特性を持つ炻器質レンガタイルにおいて、設計者が意識すべきは「色番で指定する」という考え方からの転換です。単一の色を固定的に求めるのではなく、明度や彩度、色相の幅を持った「色の領域」として設計することで、初めてこの素材の本質が活かされます。提示されるサンプルもまた完成形ではなく、その領域の中の一つの現れに過ぎません。重要なのは、その方向性が空間として成立するか、揺らぎを含めて魅力として受け入れられるかという判断です。
さらに炻器質レンガタイルは、時間の経過によって劣化する素材ではなく、むしろ周囲の環境と呼応しながら表情を深めていく素材です。紫外線や雨風の中で角が取れ、色が落ち着き、建築に馴染んでいく。そのため、この素材の色は完成時点ではなく、数年後、数十年後の姿まで含めて設計されるべきものです。
現代建築においては、均質で制御された素材が主流となっていますが、その一方で、どこか無機質で、時間とともに価値が薄れていく外装も少なくありません。その中で炻器質レンガタイルは、個体差を許容し、時間を味方とし、地域の光や空気と関係を結びながら存在する、対極的な素材といえます。
そして何より、この素材は「色を設計できる」数少ない外装材です。素材、焼成、環境、そのすべてを設計の要素として扱うことで、炻器質レンガタイルは単なる仕上げ材ではなく、建築の表現そのものを担う存在へと変わります。
その可能性は、限りなく広がっています。
レンガタイル製作参考イメージカラー
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