焼成環境:還元焼成と酸化焼成
トンネル窯:乾燥させたレンガタイルを台車に積みゆっくりと時間をかけて焼成します。ご注文頂いた色によって還元焼成と酸化焼成を使い分けます。
台車の上に井桁に積まれたタイルは、数十時間の焼成を経て窯から出てきます。その後、ゆっくりと熱をさまし、分離工程へ進みます。
酸化と還元について
焼成における酸素濃度の違い
レンガタイルの焼成方法には酸化・還元の2種類があります。
一般的なタイルは、酸化焼成によって製造されますが、土の風合いを強調したり、窯変タイルとよばれるものを作る際には、しばしば還元焼成が用いられます。
特に、当社では色彩に冴(サエ)を要求する為に必ずといっていいほど、最低限部分的にでも還元焼成にて製造しています。
還元焼成とは、燃焼に必要な窯内の空気が不足した状態でタイルを焼成する方法で、十分に空気を供給して焼成する酸化焼成と対比されます。
酸化・還元の焼成方法の違いは、釉薬または素地中の金属化合物の化学変化に影響を及ぼします。
酸素が充分な窯内での燃焼と不足した窯内の燃焼では、タイルの素地(成形し、乾燥させた生地)と窯の内部の状態において化学反応が違ってきます。
酸化焼成時には、窯の中の酸素濃度は重量比でおよそ6パーセントとなります。
レンガタイルの発色に用いられる代表的な金属化合物である鉄化合物の化学反応を例にとると、タイルの釉薬や素地中には酸化第一鉄と酸化第二鉄の2種類の化合物が存在し、酸化焼成の場合、酸化第一鉄と酸素が反応して酸化第二鉄となります。
一方、還元焼成では焼成温度が最高温度に達する前の加熱帯において、窯内の酸素を欠乏させます。
ここでの燃焼により酸素が酸化第二鉄からうばわれ酸化第一鉄となり、酸化とは逆の反応が起こります。
これが、還元の反応です。
この酸化と還元の反応の違いが釉薬あるいは素地の発色の違いとなって現れます。
酸素の欠乏状態の変化に応じて還元反応による発色が現れてきます。
土(生地)の中には、鉄・クロム・銅・コバルト・などさまざまな金属化合物が混入しています。この時、窯内の酸素濃度の変化と金属化合物の種類によって色の発色が変わってくるのです。
以上のように、還元焼成時の窯の中の酸素濃度は非常に不安定なため、微妙な色調が生じ、変化します。
特に還元焼成の場合、安定した発色を求める時にも、いずれも高い焼成技術と経験が必要とされます。
しかし、現況では焼成方法のみならず、原料自体が掘削地の環境や掘削条件の不安程度によって、色の再現や管理がたいへん難しい要因となっていることは確かです。
窯の外的要因である、四季・時間の変化・湿度・外気の風にすら影響されます。
このような特質を十分、ご理解の上 焼き物の美しさ、自然な発色の魅力を感じ取っていただければと思います。
具体的な、レンガの試作焼成等を経ながら、この還元の妙技をご説明いたします。