外壁タイル目地の効果~5つの施工チェックポイント

壁

外壁タイルの目地の仕上げに興味をもって頂く建築家の方々が増えたこともあってか、レンガの表情に様々な影響を与え、効果的に用いられるチャンスも増えています。

従来のグレーの濃淡メジを精度よく8ミリ程度に仕上げるお決まりの施工だけでは、現代の都市型の外壁デザインとして、物足りないものとなっています。

目地職人という存在

しかし、建築の分業制の影響か、外壁のデザイン構成要素である各々の素材がどうも深い影響があるにも関わらず、様々な橋渡し役をする専門家が存在しないところに問題もありそうです。タイルメジのみを専門にしたところで、建築家との接点が無いところが問題であると思っています。

各種適材適所の専用メジ材料が存在し、東京では専門の目地職人まで実は存在するのです。

職人

実際に、建築の外壁計画段階からのデザインプランが明確でなければ、現場が進むにあたってタイルが貼り終わったあたりから、メジの色を検討したり、ほんとうにこのメジ幅で良かったのかなど慌ただしく現場で決めることがよくあります。それは、外壁面の全体のデザインをあらゆる面から深く比較検討がなされていないことが多いのです。

一般的に、メジ材は一般在庫品であり、技術の伴った職人自身が設計士や施主に直接説明したり、特殊な技術を前もって説明したりすることがほぼまったく無いことにも原因があります。メジごときなんて、現場の管理者が色や幅だけ決めれば済む程度としか理解されていません。また、タイルメジの職業技能工的専門的立場も独立しておらず、つねにタイル工事業の配下的認識が強く上下関係が出来上がっている事実も否めません。

いづれにせよ、現実は「外壁のデザイン・意匠・素材感は目地で決まってしまうと言っても言い過ぎではないでしょう!」

外壁タイルメジの役割とは

外壁タイルメジの役割とは、簡単にまとめるとどんな効果があるのでしょうか?

1.コンクリート躯体や材料の熱膨張による挙動を緩和する役割。マンションなどの大きな外壁面では、揺れなどによる外力を他のタイルに伝えると同時に、クッション材の役割を果たし、躯体およびタイルを保護する。お客様の財産である建物を長期にわたって良好な状態とするタイルの基本的保護機能である。

2.レンガタイルの寸法誤差を吸収する役割。とくに、還元焼成のレンガタイルの寸法誤差は大変大きく、磁器質のタイルから比較すると相当な誤差が生じる性質がある。

3.タイルの衝撃や熱膨張などの諸条件から剥落を防護する役割。タイルは張り付けモルタルだけで下地との接着強度を保っているわけではなく、タイルのメジ自体も重要な剥がれ防止やひび割れ、雨水進入による浮きなどからタイルの強度保護を担っている。躯体の変形やそこから発生するクラックをある程度まで耐え、もとの状態を保たせる役割がある。

4.めじによる、張りパターンのデザイン効果を演出したり、幅や凹凸の表現など目的をもって表現することで外壁の多種多様な効果をもたらすことができる。

5.めじの色や幅によって、レンガの外壁面全体の色を変えることが可能である。

6.めじの色を箇所ごとに変えることによって、外壁に模様を創ることができる。

7.遠距離と近距離の外壁の見え方を変えることができる。

8.めじの仕上げ方のみで、タイルのテクスチャーを変えずに外壁に変化を持たせることも可能である。

9.壁面に受ける光や影の演出をすることができる。昼と夜、照明の効果を狙うデザイン。

書きあげてみると、まだまだたくさんの創作効果が期待できるのも目地ならではの特徴です。では、上記に書き並べた外壁メジの表現効果の中でも、驚きの5つの施工ポイントについてもうすこし、深くふれていきたいと思います。

ポイント1.あなたが慣れていないだけで、メジの太さは相当デザインの表現力を演出する。

太い

レンガタイルのめじ幅を指定をせずに現場管理者が割付をおこなう場合、疑問無く8ミリでタイル割りがおこなわれる頻度が高いのです。要するに、一般的に磁器質タイルに手馴れていらっしゃる現場管理者は、せっ器質タイルの性質によって検討せねばならない感覚がなかなかありません。世の中、施釉の磁器質タイルやプレス成形の一般的常備品にあふれている為、レンガタイルなどというイレギュラーなものに焦点はあてられていません。ですから、前もって検討済の上。図面にめじ寸法までも事細かく表記せねばならないのです。

設計士の中には、今でもネムリメジ(突き付けメジ)でメジ無しのレンガタイル張りをもとめられる方が事実いらっしゃいます。雨水のかからない内装の壁面表現方法の場合箇所や壁面の大きさによって可能な場合もあるでしょうが、外壁の壁には施主の大切な財産を守るためにはけっしてやってはいけません。一見、タイルの表面に雨水が残っていないようでもありますが、断面層から拡大視した感覚では、いつまでもタイル同士の隙間の奥深く、またはタイルの裏足付近までジメジメと雨水が乾燥せずに壁に保水しているのが現状なのです。

数十年の繰り返しのなかで、裏足に廻った水分がタイルの付着性をもろくさせ劣化させてしまうのです。そもそもめじ自体が完全な防水性のものではありませんが、タイルの躯体面に雨水を泳がせておくことはやってはいけないのです。

めじ無しの意匠に建築家の心理的デザインの価値観は理解できます。しかし、リスク回避から考えると、めじは必ず設けるという設計で検討いただけることを切に願います。

では、適切な太さとは何ミリでしょうか?これは、タイルの厚みや形状または、詰めるメジ材の種類によっても違うとしか言いようがありません。ただし、落としどころは、意匠から判断すると世の中の既存の建物の距離感や検討している建物の色彩と質感からの十分なサンプリングから得る感覚が重要です。卓上の論理として、ミリ単位のイメージから脳裏で想像する幅感は、けっしてあてにならないことは、経験者の私から強くお伝えしたいことです。めじの掻き落とし方にもよりますが、狙い処としての魅力的に、最高に見える眼線の距離を施主から情報を得て判断することが1番重要です。

太めじは、何現場も慣れれば慣れるほど、次に目指したい材質感や陰影およびレンガと合致した素材感強調の為にも多様な挑戦欲が湧き出てくるのも、このメジの魅力といって良いでしょう。

ポイント2.外壁のメジの色と幅によって、レンガタイルの色彩とメジの色彩とが壁をパレットにしながら新たな色彩を創りだすという魅力。

通常、このタイルには、どんな色のめじが調和するのかと検討するわけです。しかし、従来のセメント色(一般用メジセメント)の場合ならまだしも、考え方は新たにする必要があります。昨今、骨材の含んだ幅広のブリック系メジ材が評価されるなかで、レンガタイルに合うか合わないかというレンガのあくまでも副資材という思考では発展性がありません。メジは外壁面の壁自体の色構成の根本的な素材であって、もはやついでのものでは無いのです。

館

東京の信濃町駅前に煉瓦館という有名な建物が相当な迫力でたっています。この建物は、このメジの効果を建築家の方々にご説明する為にたびたびおとづれますが、遠方150から100メートルから徐々に近づいて、近距離の眼線で到達した時には、まったく壁面の色が違ってみえるというもっともわかりやすい事例です。近くで眺めた外壁の色合いは、石炭焼の還元韓国煉瓦の渋い茶黒の煉瓦にベージュの砂メジが幅広く詰められているという見た目そのものの別々の素材色なんです。

しかし、遠方から眺めた巨大な道路沿いの「煉瓦館」は、煉瓦を貼ったイメージから程遠い、左官的な素材の古めかしい乳白の壁が連なっているのです。メジの織りなす細胞韓国煉瓦色が遠方の眼線に交じり合ってあらたな発色を生み出して、我々の視界にあらたな素材かのように飛び込んでくるのです。

1本のタイルの色から発色した色合いを認識しても、人間の視界を通して新たな色彩を生み出して楽しませる効果があるのです。そんな効果までも期待できる、素材って素晴らしいですね。

館

ポイント3.演出力が高い。外壁面の総合演出には、人間力まで求められる。

教会

外壁煉瓦のめじへのこだわりは、もちろん昔から建築家の憧れの表現手法かもしれない。私の尊敬する建築家、村野藤吾先生は「広島平和記念聖堂」にて目地処理の大胆な表現手法をこの現場で用い、当時多くの建築家を驚かせたという。「アメリカの煉瓦積みの技法書などを参考にしながら、極端に荒々しく処理したり、そこに強い陰影がでるようにしたりして、独特の肌理を造る工夫を加えていた。」(外の装い 素材とファサードより引用)

広島

この現場は、れんが自体は焼き物ではなく、現場調達のモルタル煉瓦である。しかし、現存するこのめじの工法をよくよく見ると、れんがの上部はモルタルメジのかぶりを強調し、下部は、水はけを考えてのことか、上部のようなかぶりを少なくし、下メジに雨水を流すような工夫が凝らしてあるのです。その繰り返しの遠方からのかぶりメジが、なんとも神秘的な教会のファサードにぴったりなのです。手作業のあたたかみとあいまって飽きることの無い壁面を創りだしているのです。

記録をみると、村野先生と現場の職人との間で相当なやりとりと戦いがあったようですよ。この点を考えると、現在もおなじですね。次にご紹介するのは、上記でご紹介したかぶりメジとは違って出メジの事例です。施主様へのご紹介事例に用いたミニ見本張りが、きっかけとなった施工事例です。

サンプル

メジパックチューブ詰めの工法で約12ミリ巾にブリックメジをタイル面より盛り上げて注入し、程よいめじの乾燥タイミングをみて、自作の掻き落とし道具を使って硬化表面のツヤを落としました。指先上の掻き落とし作業です。オレンジピンクのブリックと太陽光線の陰影が独特の色合いを創りだして靜寂な雰囲気を醸し出すことに成功しています。こんなレンガとの相性の良いコラボレーションが目地の創造付加価値演出力だと思います。

九段

ポイント4.土壁、左官的なイメージでの効果をねらう。

ボーダータイルの幅と同様のメジ幅での意匠効果及び演出。

西片

幾度と無く、タイルと目地の半々の構成要素としての壁面を創り上げてきて、左官の天然土では無いものの、セメント粗骨材目地の表現効果の可能性を少なからず探ってきた。チューブメジ詰め後の乾燥のタイミング、掻き落とし時期、送風機を使っての工夫、もろもろの生見の管理を必要とする大変工夫深い作業である。

昨今の泥の壁の芸術的付加価値素材には、程遠いかもしれないが、レンガタイルのさらなる可能性を引き出してくれたのは、ブリックモルタル研究のメーカーさん(ニ瀬窯業さん)の努力の賜物であることは、間違い無いのです。簡単に注文できるからこそ、提案も可能となったことがあるし、なんとか実行可能な予算での建材として流通していることのおかげでもあるのです。ただし、まだまだ設計段階での認知力、詳しい情報、詳細な情報提供者が育っていないことが現実であるのです。

そんな事もあって、見本づくりのみならず、現場に入って事実職人として施工してみることもあってか、建築家の焼き物(せっ器質タイル)と表現としての目地の魅力を伝えるべき運動の価値として動きはじめている現状です。多くの若手建築家の事例にお役立てしたいと思っています。

ポイント5. 建築家にあまり知られていない、外壁の目地工事と希塩酸洗い。

洗い

塗りめじ工法やチューブ詰及び一本詰にて目地工事が終了した時点で、丁寧な施工の場合、いっけんそれで仕上がりとして十分なように思えることが多々ある。しかし、環境の変化の激しい外壁工事では、雨水による様々なセメントとの因果関係がやっかいなことを引き起こす状況が発生する。

そのもっとも頻度の多いのが、白華現象(はなたれ)である。完了時は、いっけん良さそうでも、施工後の雨水との長期反応によってこの現象を誘発させる。

長年、色彩の洗浄前と洗浄後の発色を比較してみると、せっ器質タイルの表面を希塩酸で焼く(洗う)事と、セメントメジのアクを希塩酸で洗い流したメジの色彩の明度は、当然希塩酸施工の方がより鮮度が高く、色彩の濁り度が無く明瞭なトーンでの発色となるのです。現場の工程上、どうしても足場解体前に洗い屋さんが慌ただしく洗浄させられる為、なかなか納得した状況に洗浄されない場合が起こりがちなのである。

せっかくタイル工事に相当な気を使って施工されたとしても、洗浄を安易に考えられては、なかなか専門にたずさわる私達の立場としては合点のいかないところが多々あるのです。洗い屋さんの現場環境向上を願っているのは、当社だけではないはずだ。