還元タイルの本物の外壁にハマったらあなたは即、マニアの道に!

外壁レンガタイル

ここでは、あえて外装材の「タイル」のなかの「レンガタイル」に関して様々のべております。

実は、仕上げ材として「レンガタイル」を選ぶ時点で脳裏に置くべきことがあります。それについて少しご紹介します。

外せない3つのこと

1.まず、意匠的に、また機能的に、施釉品を選ぶのか、無釉品を採用するのか、必然的に理解していなければなりません。
2.規格通りの寸法狂いの無いタイルを求めるなら、磁器質タイルや、酸化焼成を選び、初めから管理された商材を選定する。(要するに、色の変化を求めず一定色)
3.規格を重視するのではなく、焼き物としての価値、温かさや窯変の面白さ、冒険心をもってチャレンジする本還元焼成への選択。

以上、求める最大の壁面への要求がどこに、どうあるかという事をはっきりと決めなければなりません。焼き物にとって、全ての好都合な条件が網羅されていることなどありえません。

私の好みと好奇心は、第一に色彩にあるので、酸化・還元のいずれかを選択するという簡単に選択して済むことでは無いのです。どちらかと言うと、同じ原料を使いつつ酸化、還元の様々な微妙な段階を取り入れる手法でしょうか。特注で窯焚き職人の経験値から探って生まれる色とも言えるでしょうか、、、。抽象的な説明ですね。でも事実、料理人のような感覚ですよね。感性の中で探る感覚でしょうか。

色の説明は、難しい・・・

ほんとうに、色の説明って、ただ美しいとか、言葉を変えて賛辞したところで、簡単に伝えることができません。でも、なにかペンキや印刷物と違って、焼き物が発する根本的な潜在能力は、可能性として知識や経験で皆さん知ってはいるのです。感じてしまっているのです。だから信じたいのです。信じたいのに、遭遇できないっていう現代の不思議なところでしょうか。

しかし、「これです。」という共通言語、認識、体験がともなわないと共通認識で納得できないのが現実ではないでしょうか?焼き物、それもレンガタイルに、素材の共通認識を持つなんて、はじめから共通語なんて人が変わるたびに存在しないし、ありえないことでしょう。長年この仕事やってきましたが、毎回毎回伝えつつ、興味をもって知るという行動へと移行していただくしかないことなんですね。だから、あえて難しいです。そんなすぐに理解できる事ではないのが事実です。

外壁レンガタイル

酸化とは、還元とは

酸化・還元の説明として、どの場面でも 化学の勉強的な表現として説明されています。『酸化焼成は、酸素を十分に供給して、比較的安定した焼き上がりであり、還元焼成は、酸素の供給を抑制した焼き方で、偶発的な色幅や寸法が不安定な特徴がある。』といった事ばかりしか述べられていないのです。

もっと芸術的に、色彩的に、立体感的に 誰か何かを語ってください!お願いしまーす。という欲求でしょうか。何が現実におきているのか、どう絡みあって何が生まれているのか。気づいている人は、いるんでしょうね。会って話を聞きたいですね。

現場にいる者は、その特徴をもって何を焼き物に求めていくのか、もっと討論されるべきことだし、現実の現場では理解まで行き着かないうちに、次の判断へとページがめくられていくのです。昨今の建設現場は、納期短縮で忙しすぎますよね。印刷物のように焼き上がってくるものでもないのに、往々にして、端折られているとでもいえるでしょうか?理解するのに大変な時間がかかりますからね。

出来上がってくる創作物(レンガ)の美的扱い方法から考えると、人間も生まれてきた個性を一律の教育で美化できないのとおなじように、勝手な枠にはめて、いいとこ取りの部分を利用しようとしても、無理難題なことが事実上多いことは、皆わかっていることなんです。

外壁レンガタイル

「そんなに簡単に、お気に入りのレンガが手に入りません。」その部分をあえて口にせず、グレーな部分でお茶を濁す、大きな圧力がたえず製作者にかかってくるからだといえますね。発注が遅いのに、すぐ納品をせまったり。本当の狙いをもって還元焼成に挑むなら、工場・施工者・現場管理者・設計者・施主の全てが、共通のロマンをもってチャレンジしなければならない大変エネルギーの必要なことなのです。すべて重要なところは、人が創っているのであって、機械がたやすく作るものではありません。

還元焼成をあまくみない方が良いですね。原料から、成形時からの工夫、焼成時間、窯積みの位置、反りや歪み直しの手間、現場では、割付の寸法、目地幅、反りの職人の手慣れた張り技など、スペシャルに準備された舞台が必要となってくるのです。当たり前ですよね。いいもの、素晴らしい素材を効果的に施工するのですから、偶然性など無いのです。人が全て手作業でやることなのです。

外壁レンガタイル

レンガタイルはマニアック

なにが、いいたいのかということですね。レンガタイルの壁面意匠への理解へは、一方通行の発注者側からの圧力、施主・設計という監理者としての立場、建設施工管理者(ゼネコン)からの、製作者への下請け的責任転嫁的思考では、誰しも本来の職人的芸術美へは導かれないということなのです。「やる気にならない」と言う事です。

レンガタイルは、「建材」として簡単にとらえられるかもしれませんが、分類すると『 「湿式押出製法のせっ器質タイル」という部分の酸化・還元の焼成方法まで吟味した建築用専門の一素材 』 で考えると、相当マニアックな部分であると思いますよ。そもそも、私の仕事自体、普通に理解されませんから。ほぼ、「タイル屋さん」って近所では思われていますからね。
近所どころかほぼみんな。(笑)

世の中は、ごく普通の、なるべく不特定多数に指示されるものづくりばかりです。少し力を入れて相手の為にと、労働力を酷使して表現したとしても、簡単に却下されたり、知識や理解の無い誤解のままの力関係でなえてしまう構造が、目にあまるほど多いのが現実です。

全国いたるところに、同じものが、多くの数量で売れれば、企業の論理としてありがたいことかもしれません。しかし、『建築』という分野で、しかも『焼き物』の素材でそんな無神経な販売方法に熱が入る事自体に、過去にも犯してきたようにそもそも間違いがあるのです。(※今は無き多くのレンガタイル工場が、納期を取り合うくらいに大量につくり続けてきた歴史があります。)

希少なレンガタイル

皆さんは、レンガタイル工場が、現在国内に何窯残されているか、考えた事がありますか?それも、「酸化・還元」を語るほどの設備と経験値と本来の建築へものづくりの思考をもって稼働している窯元(工場)ということですが、、、、、、、。希少価値そのものといった数しかないことには、間違いありません。

昨今、建築での仕上げ材の設計仕様書をみると、様々な素材が、ほぼメーカー既成品の品番指定となっています。カタログや多色チャートの中から選択し、コーディネートしながら仕様が記入されています。タイルならまだしも、レンガタイル(湿式品)の国内産は、ほぼ受註生産品となりつつ、即納品は、既存国内量産品か中国品、海外輸入品から選択せざるを得ない現状です。

何社もカタログを取り寄せてみてください。ほぼ、おきまりの在庫規格商品が、カタログの品名、品番を変えて商社やメーカーから流通され、「レンガタイル」という日本建築の貴重な文化、長年高級品の素材イメージとして成長してきた分野に、残念な結果をもたらしています。「建築」という分野で活動してきた者にとって、現状の市場にならべられた商材から、建築家・設計士の皆様が、好奇心と興味をもって眺めていただけるものなのかは、同業者として大変疑問なのです。危機感さえ感じているのがホンネなのです。

焼き色の神秘を語る

もう一度、本論の「還元タイルの本物の外壁~」に、話を戻してお伝えしていきますが、レンガタイルをトンネル窯で焼成する時の還元焼成は、下記の現代陶芸の第一人者、加藤唐九郎(1985没)の表現からも、何をいわんか伝わってきます。工場でベルトコンベアからトントン出来上がってくるものでは無いのですから。

建築用の焼き物にも、陶芸での微細なやりとりをしながら焼色の選定がなされているのと製作方法は違っても焼き物の色合いへ神秘が伝わってくるのです。(下記文中より)

◎酸化と還元について、詳しく教えてください。
「九百五十度までは、窯に空気をたくさん送り込んで焼く。このように、普通に薪を燃焼させるのが酸化だ。しかし、九百五十度より上は、たいていのやきものが還元にかえる。つまり、酸素を送らず、逆に薪をくべる量をふやして。不完全燃焼させることによって一酸化炭素が生じ、土や釉の中の酸化物が、もとの物質にもどる。例えば、酸化鉄(紅殻)が、もとの鉄に変っていりわけだ。きたない色をしていたものが、こうして白磁や青磁になる。ごく少量の鉄分は還元されると無色になるし、それより鉄分がやや多いと青い色が残るんだ。こういう焼き方を、還元焼という。この還元の強さ次第で出る色が違ってくるが、結局はそれが難しい。その時の、気温・湿度にもよるから。

また、還元が難しいのは、くすぶらせながら温度はどんどん上げていかなければいけないことだ。これが、非常に 上がりにくいんだ。酸化は上がりがいいね。でも、志野のように白いものを焼くときは、還元でなければできないし、織部でも、一度は還元の過程を経てから酸化させないと、人の眼にみだらな感じを与える色になる。磁器がガラス化するのも、還元の時だ。黄瀬戸などは、千百五十度を過ぎたところで、送り込む酸素の量をふやして、再び酸化に切り換える。すると、還元で消えた色が、今度はもっと良い色になってもどってくる。このやり方次第で、どんな色でも出せる。例えば、青磁を酸化させると黄瀬戸になるんだ。

そして、千二百五十度に達すると、だいたいのやきものは、焼けてしまう。千二百度から千二百五十度が、焼き上がりの温度の標準だ。温度が高いほうが、人間の眼に落ち着き、鮮やかに見える。だから、火度の低いものには、逆に不快感がある。唐三彩なんかは、どぎつい嫌な感じがするが、それは火度が低く、九百二十度くらいで焼き上げているからだ。」(新潮社:唐九郎のやきもの教室 より)

外壁レンガタイル

陶芸とは少し違うけれど

陶芸での焼成とは、大幅に違いはあっても、建材である粘土を成形するところからの「レンガタイル」の注目され得ない工程に、窯中の空気の環境(雰囲気)と素地中の金属化合物の化学変化によって、あの魅惑な色彩ができあがってくるという現実。そしてかつ非常に不安定な流れを経てできあがってくるものだどいうことは、理解されたかと思います。

なにしろ、原料がいまだに採土場からの大型重機で掘られた土をつかうところからの焼き物であって、化学原料や石油系の原料のように一律精度良く管理し得ないものを使っているわけですから。工場に行って原料というものの実態を見れば、びっくりすることだらけなのです。

そんな、ある意味、「やぼったい素材」の心地よさに数十年前にハマってしまった私自身、決してレンガタイルをただ単に、ひいき眼で見ているわけではないのです。太陽にあたる色。青空に映える色。雨露に濡れた表情や太陽との影。ライトに照らされた時の陰影。たくさんの表情、色彩、濃淡表現、窯変の美しさ、魅惑の還元の種類。

ハマらずにはいられない

多種多様な表現力を知ってしまった事によって、建築の皮膚である壁を自らの創造性をもって表現するという醍醐味と感情に連動するあの壁面力は、建築家であればこそ、ハマらずには、いられないものと思うのです。意匠思考を表現する天然の土と炎の芸術素材。独自の作品にチャレンジできる心地よい創作物として、今後も消し去られてはいけない数少ない素材ではないでしょうか。

還元にハマるということは、酸化を過小評価することでは無く、還元の美しさを知る事によって酸化の対象美を発掘理解することができるだと思います。私の好きな色、壁面を構成する色のバランスが、酸化と還元の微妙なコントラストに有ることはもう自分の本心に染み付いていることであって、還元と酸化の質までも追求してみたくなる魅力に、深いジレンマと欲求との連続が存在していくのです。

外壁レンガタイル

マニアックな色彩ポイントを一度知ってしまうと、模索して陶芸のように少量で焼き探ることのできない現実に、創作の欲求不満が必ずつきまとってくるのです。還元タイルのツボにハマったレンガタイルファンがマニアックな道に、引きこまれていくのは、建築に携わるものの本能として、現在では大変贅沢なことなのかもしれませんね。だれしもが、体験できることではないのですから。

だからこそ建築家が、還元タイルの我々製作者側からの視点をも知識と経験で知りつつ、自分の作品にさりげなく取り入れていければ、なにものにも代えがたい、独自の創造素材として初めて価値があがり、施主への感動までも操作するような現実が存在するのではないでしょうか。レンガタイルの魅力、それは還元タイルの本物に出会う事、そしてどこにハマるのかは、ハマった者どうし、にやけて語ろうではありませんか。